人生だいたい大丈夫
熊坂義人ブログ
お盆
…ああ、これはどうも、いやいやついに結局今まで一度も会えませんでご挨拶がずいぶんと遅れてしまいましたね。初めまして、ご機嫌よろしそうですね。ええ、元気ですよ。ええ、ええ。いやあ、こちらこそ本当にお会いしたかったんですよ。写真でしか…、あ、いや、妻からもお話はいろいろ聞いていますよ。え。ああ、そうですね、具体的にパッと思い付くのはぁ、え〜と、あ、あ、…「あやしきぞんぶり」って口癖なんですか?ああ、すみません、こんな事しか思い出せず、いや、他にもたくさん聞いてますよ。本当です、本当ですって。ちょっと急なもので…、う〜ん、と。え?もう良いですか。ああ、すみません。はい?…いやぁ、そんな、ありがとうございます。いやいや、お母さんも明るい顔してますよ。ええ、あ、そうだ、子どもがそろそろ帰ってきますよ。会ってあげて行って下さい、え、もう行っちゃうんですか。いやホント、もうすぐですよ、もうすぐ。行きますか、残念ですねぇ。では、また今度、次の機会にはゆっくりしていって下さいね。

 目を覚ます。妻の寝顔に子どもの寝相。
 これが幸せか、と思う。


推理小説
推理小説を読んでいて、いつもなら「犯人は誰だ」なんてことを考えずに
ただ話の展開に振り回されながら読み進めていくところを
今回はちょっとそんなところにまで気を回しながら読んでみようと。
そうするとなかなかにオモムキも違ってくる。
展開がますますもってこちらを振り回してくる。
それで本が手放せなくなってしまって今日は
うちから徒歩で45分くらいの大きな公園まで本を読みながら歩き
着いてからもすこしばかり地面がこんもりとふくらんだ丘みたような場所でもって
座り込んで本をむさぼり読んでいると、隣で全く同じ本をヤング☆ナッツのリーダー
久保勉くんも読んでいる。
これは、とばかり話しかけて犯人が分かったかどうかお互いに聞きあい
まだと分かると情報を交換しあう。
そうなんだ、分かりそうで分からないんだ。
しかしここでリーダーと会えたのはよかった。
この情報交換で、この本の表紙に謎の手がかりが隠されていることが確信された。
この本の表紙には河が描かれており、向こう側にはエッフェル塔、こちら側には恐竜と老婆がいる。
「この老婆、何処かで会ったんだよ。」などと言いながらリーダーは公園を国道側の出口から出ていってしまった。
それから本を読み進めるのをやめて、この謎に向き合ってみようと考えた。
公園をうろついていると劇団スパンドレル/レンジ主催の松本さんが汽車に乗り遅れて途方に暮れていた。
お久しぶりですなどと声をかけて、僕が今抱えている謎を松本さんにぶちまけた。
松本さんは親身になって聞いていてくれたけれども駅のホームには誰もいない。
そうだった松本さんは汽車に乗り遅れて途方に暮れていたんだっけ。
別れ際に松本さんは「この塔はエッフェル塔じゃないよ。」と教えてくれた。

そうか、この塔はエッフェル塔じゃないのか。
と町を歩きはじめるといつの間にか真夜中になってしまっていて
いつも夜中でもにぎやかな街は静まり返ってしまっていて、ちょっと恐い。
なにやら大きなダクトのようなステンレス製の箱が見える。
そのなかに表紙の老婆が冷凍されていたのだ。
この冷凍老婆を解凍できるのは彼しかいない。
そうだ、彼を呼ばないと!

というところで、汗だくで飛び起きた。
彼って誰だったんだろう。

なんて考えながら明け方に家を出て、45分歩いて公園で本を読んだ。

バタバタ
最近、なにか日々におわれてバタバタとしていた。
日記もこの数日間はつけられなかった。
そんな日々でも夜遅くに帰り、子どもの寝顔を見るのは
これは嬉しいもので、ほっぺなんかを触りたくなってしまうものだ。
妻は「起こさないで!」などときつくいうけれども
それでも触るのをやめずに、小さな手や鼻、足なんかを
つっついたりしていると案の定起きてしまう。
しかし夜の力とはすごいもので、目を覚ました子どもは夜だということが分かると
一度目が覚めてもちょっとやそっとならば、またすぐに眠りに落ちる。
だから僕としては「大丈夫、大丈夫」とタカをくくってしまうのだ。

そうやって子どもがまた眠りに落ちようとしたとき、大きなあくびをした。
口の中が丸見えになるような大あくびだ。
じっくり観察してみると、口蓋がべっこりと凹んでいる。
「口の中の天井が深く凹んでいるぞ、これは平気なのか?これでいいのか?」
と聞けば、どうやら乳を飲む時にこのくぼみを使うんだそうだ。
このくぼみというのは、成長過程でなくなるものらしい。
そうかなるほどよくできているな、と、感心していると再度大あくび。
まじまじと見てやろうと、目を凝らしていると、あるある。深く落ち込むようなくぼみ。
そのくぼみは、ちょっと恐くなるくらい深くて暗い。
ようく見ていると、そのくぼみに小さな老紳士の姿が見える。
こちらを向いて、大きく手を振っている。
アレこれは不思議、と老紳士に声をかける。
「どうなすったんですか、こんなところで。子どもの口の中ですよ。」
「いや実は、ちょっと道に迷いまして誰か助けでもいやしないかとコレをこしらえていたんです。」
手もとを見ると、老紳士の体つきにしてはやや大振りな旗。
白地に青でシルクハットの絵が書いてある。
なるほどこれなら遠くからでも、発見できる。
「ちょっと振ってみてもよろしいですか。」
「もちろんですとも、あなたのような若いお方に振ってもらえればたちどころに助けが現れることでしょう。」
それではと、はたをバタバタと振ってみた。
すると妻がこちらに気付いたようだ。
「なにしてるの!そんな大きな旗。あんまりバタバタやらないでよ!」
子どもがすっかり起きてしまって、ベッドの上でバタバタしている。
「やあ、ごめんごめん。この老紳士が困っておいでのようだったから。」
「どなた?」
「これは申し遅れましたが、名もない老紳士です。ご主人にはすっかり助けられてしまって、お礼にこちらを差し上げます。」
老紳士は玄関のドアをバタンとしめて出ていった。

そんなわけで我が家の庭では、シルクハットの旗がバタバタしているのだ。

おわり
天気予言
「うわあ、本当に降ってきやがった。」

まさか、とは思ったけれども、出がけにこうもりを
鞄に忍ばせておいて良かった。
傘をひろげると、バラバラバラと音がたつ。
「タニシ…。」
と呟いてみる。そういえば、タニシは魯山人の好物だったんではなかったか。
と思って、ひとつ摘まみ上げてみたけれど、やはり気が変わって捨て置いた。
ふと見ると、傘を持たずに歩く人もまばらにいる。最寄り駅からの帰り道。
タニシに濡れて、ひどく気の毒だ。
こんなものに降られて、風邪をひいてもつまらない。急ぎ足で帰ろう。
バラバラという音をききながら、タニシの降る街を足早に行く。

オートロックのマンションに、どうにかたどり着いて
14階にエレベーターで上がる。

ここの所、天気予報が良く当たる。
今日だって「晴れのちタニシ」。
夕方18:30頃からタニシが降るでしょう、という予報。
ピタリ、だ。
つい何週間か前にも、「豚」という予報があった。
見事に的中した訳だけれど、お隣が屠殺に精通した方だったから良かった。
朝起きてみると、ベランダに一匹の大きな豚が元気に走り回っていたので
どうしようか考えあぐねたものだったが。
方々へお裾分けしたけれど、今だに家の冷凍庫は豚肉専用になっている。

肩についたタニシをバサリと振り払って、玄関を開ける。
シャワーを浴びて、缶ビールを飲む。
それから、テレビをつけると天気予報がやっている。

明日の予報を見ると、俺の顔写真がでている。
曇りのち俺。

14階か。
あたるだろか。

おしまい





雪のあさ。
朝起きると雪が降っていた。
寝る前にはちっとも降っていなかったのに、
朝起きると一面が雪化粧なんていう朝は、それは興奮する。

興奮も覚めやらないうち、朝ご飯前だ。
ドアがノックされる。
誰か?こんな朝早くに。

開けてみれば、灯油屋さん。肩には雪が積もりかけている。
「灯油を買って頂けませんか?」

聞けば灯油の販売ノルマが達成できなければ、部長にドヤされるんだとか。
それは丁度よかった、実は今、灯油が切れていて朝飯食べたらすぐにでも行くつもりだったんだ。
「買って頂けますか!それは有り難い。お安くしておきます。」
と、なんと半額にしてくれた。

いやぁ、これは朝から得をした。むふん。と得意になってみそ汁を作る。

朝ご飯を食べ終わって、そろそろ石油ストーブの灯油が切れる。
給油しようと言う段になって、一斗のポリタンクの蓋を開けてみると
そこにはいっぱいのみそ汁。具はあさり。
ふうむ、灯油ではなかったが、あさりのみそ汁は好物だ。食べてやろう。

みそ汁を食べれば、あったまる。

おわり